斧を考える


ナベです。
チェンソーが普及して50余年。伐採作業から斧が影を潜めて久しい昨今。薪割斧はホームセンターでも売ってますが伐採斧となると中々見つからない現代ですが、斧に込められた思い、伝統は今で七本の線として受け継がれているようです。

日本の斧、いわゆる和斧には側面に線が入ってます。片面には三本線、もう片面には四本線。これが何のために付いているのか、諸説あります。
一つは自分に刃が当たらないように、木が当たらないよう、災いを避けるようにという意味を込めて身(三)を避(四)けるという説。
一つは、昔は木を伐採する前に木に斧を立て掛け、山の神様に”木を切らせてもらいます”と拝む、簡易的な神事を行っていました。その時のお供え物の代わりとして三本線がミキ(神酒)、四本線が四方山の山海の食材をあらわしているという説。
どんな由来にせよこの七本の線には山、自然への思いが込められてるようです。この七本の線は日本の斧特有のもので洋斧には見られません。もしくはそういったゲン担ぎのような何かが洋斧にあるという話もあまり聞いたことがありません(自分が知らないだけという可能性が大いにありますが)。これはなぜなのか?

日本の哲学者、和辻哲郎は気候、風土が人間の活動に影響を与えると考え東アジアをモンスーン型、西ヨーロッパは牧場型と分類しその社会環境の特徴について論じています。日本はモンスーン型に当てはまりその特徴を豊かな雨量、植物生育に適した気候により自然の恵みを豊富にうけられるため受容的な態度が育まれる一方、大雨、洪水、または干ばつなどの人知の及ばない自然の脅威にもさらされることにより忍従的な態度も生まれるとしました。一方牧場型は自然は猛威を振るわず、雑草も生えない、開墾するだけで牧場になるような環境のため、人にとって自然は従順であり管理すべき対象であることから合理的思考が発達したとされています。

こう考えていくと斧一本に対して日本では自然への畏敬の念ともいうべき痕跡が見られるわけ、洋斧にはフォーンフートと呼ばれる曲線を描いた柄やダブルビットアックスのような刃が二つある斧が生まれ、和斧にはそうしたものがないわけが分かるような気がします。
う〜〜ん、これ以上のことを考えるには西洋の斧の文化的な部分というものを自分はあまり知らなさ過ぎるのでそこは今後の課題ですね。
え?お前の課題は早く一人前の仕事が出来る様になること?社長!おっしゃる通りです!